当院整形外科では、これまで多くの膝、股関節疾患に対して、人工関節置換術を施行してきました。この手術は、術前の綿密な計画が重要であり、結果の良否に大きく影響します。手術の際には、術前計画に従って、人工関節を最適なサイズ、位置に設置することで、術後の合併症の予防や、長期の関節機能の維持が期待できます。
従来の術前計画は、単純X線やCT画像を専用のソフトを用いて、パソコン画面上で作成するため、立体的ではなく平面上での設計図でした。また、実際の手術においては、特殊な器械を用いて人工関節の設置位置を確認してきましたが、計画どおりに手術を再現するには限界があり、術者の経験によってカバーしてきました。
これらの問題点を解決するため、ナビゲーションシステムを2019年9月から試験的に導入し、2020年11月からは正式に導入となりました。このシステムにより、術前計画を立体的に立てることが可能になり、より綿密な設計図が作成できます。
例えると自動車のカーナビゲーションに似た原理で、目的地を設定すれば現在の位置を割り出し、地図上にリアルタイムで表示されます。
ナビゲーションシステムは、本体から発した自発光式LEDをポインターが受信し、その後、本体へ位置情報を伝達する相互システムとなっています。
CT画像検査データより3次元股関節形態をコンピューター内に再構成し、良好な人工股関節の固定性や可動域が得られるよう、骨切り位置・角度の設定、人工関節の種類や設置位置等を術前に検討します。
手術中はリアルタイムに患者さんの関節と、ナビゲーションシステムの画面を確認しながら手術をします。これにより、骨をより正確に削ることが可能になり、誤差は2度・2o以内で術前計画通りに人工関節を設置することができます。
人工膝関節置換術においては、術前計画との誤差は1o以下の精度での再現が可能になりました。
さらに、術中に膝関節の動作解析ができ、術後の関節運動をシミュレーションできます。
ナビゲーションの導入で、これまで以上に正確で、精度の高い手術が可能になり、安全性、術後成績の向上に応えられるようになりました。股関節あるいは膝関節の痛み、機能障害で日常生活に支障をきたしておられる方は、当院整形外科にご相談ください。